本年度は本プロジェクトの1年目にあたり、本プロジェクトの基礎的部分から応用までを研究した。具体的には、賃貸住宅市場の均衡論的分析の計算機シュミュレータを発展させて、計量経済学的な考察へのつながりを研究してきた。計量経済学的な部分へのつながりも明確になってきており、残る課題はそれをどこまで応用して、具体的な賃貸住宅市場のデータに応用するかである。このためには、東京近郊の都心への通勤路線の賃貸価格の調査が必要であり、その調査を現在行っている。また、理論的な研究として、効用関数の形状をどの程度許すかが問題になる。これに関しても他文献などとの関連で、調査中である。 第1年度の研究成果として、現在、"An Equilibrium-Econometric Analysis of Rental Housing Markets with Indivisibilities"(Tamon Ito)を執筆中である。本論文ではシミュレーションの結果の他に、計量経済学的な意味でどのように結果を評価するかなどに関しての成果が上がっている。さらに、賃貸住宅の各カテゴリーでの平均家賃が統計学的意味において最適な推定量になっている。しかし、それは計量経済学的な意味においては、背景の経済構造を記述していないという意味において不十分である。そのために、計量経済学的に意味のある推定値を尤度比検定を用いてテストするのが現在の目標である。そのためには、尤度比検定の理論を拡張する必要があり、また、その計算のためにもシミュレーションが必要になる。このシミュレーションは乱数を発生させるモンテカルロ法が有効であり、高次元のt-分布のヒストグラムを描き判定する。これによって、現在、執筆中の論文の貢献はより大きなものになると考えている。
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