研究概要 |
本研究は,知識社会における知識ネットワーク構造を対象として組織学習の役割について探求する。特に,生産活動における学習メカニズムに焦点をあてる。競争的環境において企業らが相互学習を行う場合の知識ネットワークのモデル化を試みる。企業間で相互学習が行われる状況を想定して,知識ネットワークがどのように形成されるのか,その動態特性を解析する。多様な知識の相互作用による学習メカニズムの構造の解明とそれがもたらす経済的な効果を分析する。市場経済システムにおいて学習地域が重要な役割を演じることを示し,これを支援する政策のあり方を提案することを目標としている。 初年度は,本研究の位置づけを明確化するために,知識社会,学習地域,及び知識情報ネットワークに関する既存研究の成果の整理や既存文献のサーベイを行った。さらに,知識社会や科学技術政策に関する先進諸国の動向について調査を行った。また,国内外における学習地域の事例や産業クラスター政策について調査を行った。アメリカ,イギリス,フィンランド等における産業クラスターの事例を解析した。国内の具体的な事例として,愛知県内の企業ネットワークについて検討した。 学習地域モデルを開発するために必要となる企業の知識投資理論,企業間の相互作用に基づく知識資本蓄積のモデル化の基礎となる微分ゲーム理論,学習メカニズムを具体化するためのニューラルネットワーク理論などについて検討を加えて,各理論の特性を比較分析して,学習地域モデルを設計するための理論的な枠組みを構築した。学習地域のプロトタイプモデルを開発し,そのモデルの理論的な特徴を解析した。
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