本年度は、学習地域や知識社会に関する各種数理経済モデルについて資料収集を行った。国内外における学習地域の事例調査を行った。具体的な事例として、東三河地域の企業集積地を対象とし、企業間の学習機会について調査した。 実践的共同体(Communities of Practices)の数理モデル(Huberman and Hogg (1995))を参考にして、学習地域モデルの開発を行った。複数の企業が知識を相互に学習しあう生産システムを想定して、静学的な企業間学習モデルを定式化した。この静学モデルを基礎に、微分ゲーム理論を応用して、モデルの動学化を行った。 この理論モデルの解の挙動を明らかにするために、仮想的な数値データによるシミュレーションモデルを開発した。最適な企業内の自己学習と企業間の相互学習の動的な解を数値的に導出して、特徴を解析した。 また、このモデルに物理的な空間を導入することで学習の距離減衰効果を組み入れ、さらに、多様な知識の相互作用の効果を表現するために、学習の時間遅延効果を組み入れた。学習地域における企業間の距離の影響や知識の新規性の影響を分析した。 企業間の学習メカニズムと人間の脳がもつ学習メカニズムとの関係を分析し、相互結合型のニューラルネットワークモデルとの類似性を検討した。 技術革新の普及段階における伝播拡散効果、情報伝達効果や習熟効果を考慮した学習モデルを構築した。
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