平成20年度は、前年度に開発した基本モデルをベースに最適化モデルである社会経済環境モデルとの統合を試み、温室効果ガス排出税や補助金といった経済政策が新エネルギーの需要や生産量に及ぼす影響や、日本全体の経済規模や温室効果ガス排出量に及ぼす波及効果について検討した。基本モデルは習熟によるコスト低下とそれによる需要拡大のサイクルで新エネルギー産業の成長過程を表したもので、消費者の価格応答を表す関数をワイブル関数とし、シェアに依存したパラメータの変化を考慮している。 住宅用太陽光発電産業をケーススタディとした検討結果からは、補助金により生産量は上昇するが、その効果は初期に集中し、中止した時には逆に生産量が落ち込むというリバウンド効果も見られることがわかった。また、総額を一定として補助金を少数の消費者に集中的に支給するケースと多数の消費者に少額ずつ支給するケースを比較した場合、結果にはほとんど違いが見られないことがわかった。同じ金額を1年間に集中して支給するケースと9年までの期間に分散させて支給するケースについても、明確な違いは見られなかった。 日本全体へのマクロな影響としては、温室効果ガス排出税を財源とした補助金により排出量は削減されることがわかった。特に京都議定書目標の達成を前提(シミュレーション上の制約)とした場合、排出量とともに経済規模が縮小するが、経済政策を導入しないBAUケースと比較するとその縮小幅は小さく、BAUケースと比べてGDPは上昇することがわかった。 以上の成果について、査読つき論文発表2編と5件の学会発表を行った。
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