研究概要 |
最終年度である平成21年度は、前年度まで行ってきた新エネルギーの普及促進政策についての検討をいくつかのンナリオのもとに引き続き行うとともに、その結果をまとめた。シミュレーションにあたっては住宅用太陽光発電産業をケーススタディとし、その成長過程を表現する基本モデルと日本全体へのマクロな影響を評価する総合評価モデルを用いて、温室効果ガス排出税を財源とした住宅用太陽光発電産業への補助金が全体の経済規模や温室効果ガス排出量に及ぼす影響について検討を行った。排出量に制約のないシナリオでは、炭素1トン当たり2,000円の排出税を産業と消費部門の両方にかけた場合と産業だけにかけた場合の比較を行い、どちらのケースでもGDP、排出量ともに減少したが、GDPあたりの排出量は前者で削減されたが後者では増加する結果となった。次に、京都議定書の排出量削減目標を制約としたシナリオについて検討した。排出税や補助金をかけないBAUケースに対して、排出税と補助金を導入したケースではGOPが増煎した。その他、シミュレーションの基準年である2005年の排出量を制約としたケースについても検討を行った。以上の結果として、温室効果ガス排出税を財源とする住宅用太陽光発電への補助金が日本全体の排出量の削減につながり、京都議定書目標の達成を前提とした場合の経済への影響も軽減されることが推測され、また、他の新エネルギー産業に対しても同様の補助を行うことによりさらに大きな効果が期待されることが明らかになった。 以上のシミュレーションにより、環境負荷基準をクリアした上で経済活動を最大化するための新エネルギーの促進政策のあり方を定量的・具体的に提示し、補助金の支給先や額、タイミングといった要素について、環境と経済のトレードオフ関係とともに明らかにした。 以上の成果について、査読つき論文発表5編、図書1編および12件の学会発表を行った。
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