研究課題
本研究の目的意識は1.格差を意識し不満を覚える主体はそもそも誰との格差を意識するか2.格差に不満を覚える・再分配を求める心理の主因は何かである。今年度は考えられる要因を絞るため、アンケート調査を主として行った。対象は25歳から45歳の男女有職者で、依頼数は1570、有効回答数は604であった。分析は途上であるが結果の概要は以下の通り。1.については具体的な人物が最も想起される比較対象であったが、平均所得の統計を想起するとした回答者も4割強存在した。また具体的な人物が想起される場合、年齢・職業などで共通点がある身近な人物が比較対象として意識されやすい一方、主にマスコミの報道で知った面識のない相手も自らの所得水準を評価する際の比較対象として考える者ものべ回答者数の4割強存在した。対象にした他者の所得水準や統計をどの程度正確に知っているかについては、なんとなく知っている程度と答えた回答が最も多く、不正確な推察から態度を決めている傾向が確認された。2.については、再分配は政治的手段による持てる者からの収奪であり、Nozic(1979)が指摘する他者の所有権への敬意という倫理観に反するものであることに注目し、その倫理を乗り越える心理的要因を確認するため(1)比較対象にした他者が当人より低所得の者に対しての所得再分配に応じる責任がある考える程度(2)その他者の所得がどの程度正当な所有権をもつものであると考えるか(3)その他者が所得を得るためどれだけの努力をしていると考えているかについて尋ね、回答にそれぞれに相関があること、つまり他者の高所得が当人の努力によるものでないと考える者ほど他者に再分配を求めることを確認した。また努力の承認と格差への不満の相関も確認された。ただし所得格差への不満と他者が再分配すべきと考える程度との間に有意な相関が見られず、両者の関係が間接的であることが示唆された。
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Lecture Notes in Economics and Mathematical Systems, Developments on Experimental Economics 590
ページ: 157-162