研究概要 |
本研究の目的は、第1にマルチエージェント・シミュレーションの手法を用いて、いかなる社会的、技術的および個人的条件の下で、金融パニックが発生するかを解明することである。第2に、この知見により、社会シミュレーションの関数系のパラメータを確定して、金融パニックを回避するための妥当なミクロ金融政策の支援ツールを開発することである。 平成20年度に、既に実施済みの「金融パニックアンケート2007」における個票データを用いて、以下の2論文を執筆した。Katsutoshi Yada, Takashi Washio,Yasuharu Ukai, Hisao Nagaoka, “A Bank Run Model in Financial Crises"においては、人口知能のツールを用いて預金者の行動に与える要因を抽出し、預金者の地域属性や預金残高の分布のみならず、どのような支店に口座を開設しているかが大きな影響を与えることが判明した。この結果、各金融機関の支店が金融危機にあたってどれだけの現金を保有しなければならないかを推計するツールを開発した。Toshihiko Takemura, Takashi Kozu, “Statistical analysis on an individual's deposit-withdrawal behavior: An empirical analysis using individual data collected through a Web-based survey"においては、重回帰分析を用いて、預金者が情報媒体にどのような信頼をおいているか、預金者が他人とどのようなコミュニケーションを取っているかが預金引出行動に大きな影響を与えていることを発見した。重要な発見は、週刊誌、月刊誌、インターネットに信頼をおいている預金者の方が他の預金者よりも預金引出確率が高いことである。
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