本研究は、製造業に関して主に大阪とその近辺で行われている、これまで互いに取引のなかった企業間の出会いの機会を作る取り組みに着目し、その理論的分析を試みる。これは、大企業や優れた技術を持つ中小企業が、優れた技術シーズ(種)と、それを生かせる技術ニーズとを結び付ける仕組みである。本研究では、こうした共同開発や新規調達先開拓の新しい取り組みを、大阪モデルと呼ぶ。大阪モデルは、大阪に特殊的なものではなく、むしろどの地域でも実践可能な普遍的モデルである。ただし、大阪モデルの具体的取り組みの多くが大阪とその近辺で行われているのは、その地域に製造業企業が多数存在するという大阪の地域的特性にも依存している。 本年度は、大阪モデルの持つ特性と問題点を考察した。これにより、大阪モデルが、従来の共同開発やスポット的取引と異なる、第三の企業間取引であることが明らかとなった。大阪モデルは、多くの企業との取引関係を広範囲に模索しながらも、個別企業とは信頼関係に基づいてより高度な共同問題解決を目指すものである。つまり、オープンな企業間関係に基づいてパートナーを探す。そして、パートナーが見つかるとその企業と連携し、その後はクローズドな企業間関係を築いて、主にインテグラル型の製品の共同開発を行うという、これまでにないユニークなモデルである。 来年度の課題は、海外の共同開発のパターンと比較研究することである。これにより、大阪モデルのユニークさがさらに明らかになるであろう。
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