平成21年度は、共同研究者であるDr.Tatiana Bouzdine-Chameeva(Bordeaux Management School教授)と学会発表および共同論文作成を勢力的におこなった。 日本における清酒の需要低迷と、中小零細企業が多い清酒メーカーの流通戦略についてのケーススタディ論文を完成させた。 また、海外の2つのワイン学会で報告をおこなった。海外には多数の社会科学系のワイン研究者が存在し、学会も複数ある。アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、南アフリカから、実務関係者、政府機関関係者など数多く参加し活発な議論が交わされているが、日本は世界最大のワイン消費国のひとつであるにもかかわらず、研究者は皆無であることを残念に感じ、今後日本の酒類市場や勃興しつつある日本のワインについても、国際学会等で紹介したいと感じた。日本はさまざまな酒類を受け入れ輸入してきた国であるし、清酒も焼酎も現在海外輸出が少しずつ軌道に乗り始めている。過去GATTで日本国内の酒税率が問題とされており、常に他国の主張を受け入れる受動的な立場で、その議論に参加しているとは言い難い。海外(特に欧米)の酒類産業をめぐる動向を知るためにも海外の研究者との意見交換は欠かせないと考えている。 また実態調査を進めるうちに、この業界は、商業者と中小生産者とのネットワークの問題とともに、農業(原材料の調達を通して)、市場に対する規制のあり方(税制)、日本の食文化、など、様々な問題を内包している重要な研究対象であることが分かってきた。近年、ビオワインが世界的ブームであり、日本市場がそのブームを牽引している。農業と商業とふたつの領域にまたがる研究課題である。ビオワインの実態についての共同研究を推進していきたいと考えている。
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