研究課題
この研究は、多層的なコンテキストにおいて人々が相互行為(インタラクション)において行う評価という側面から、文化や技術の伝承という問題を考えていこうというものである。この研究では、幾つかのミュージアム(ロサンジェルスの全米日系人博物館、横浜の海外移住資料館、倉敷の大原美術館)と、さいたま市にあるS保育室、名古屋大学が設置したD保育室を調査の対象とした。1保育園での研究では、留学生の子どもが3分の2以上を占めるS保育室で、こども同士のやりとりや、保育者とこどものやりとりをビデオ撮影し、相互行為分析の手法で分析した。また名古屋大学が設置したD保育室の実態調査を行った。2全米日系博物館、海外移住資料館、大原美術館でガイドと観客の相互行為の様子をビデオ撮影し、ガイドがどのようにして解説行為を多人数に対して行うかについて、相互行為分析の手法で分析した。この分析では、身体的行動(特に頭の振り向き動作)とことばが緊密に結びついていることがわかった。その分析に基づいて、ゴーギャンの名画を解説するロボットを開発し、実際に大原美術館で多様な観客に対する解説を行う実験を行った。その結果、身体的行動とことばを、相互行為的に適切な仕方で結び付けることで、有効な説明を多様な観客に対して行うことができることがわかった。この研究は、ヒューマンコンピュータインタラクションの最も権威ある国際学会であるCHI2009の査読付論文として採択された。また多人数での場面でのガイドと観客の相互行為をさらに分析した結果、多人数場面での相互行為が社会的体面という問題とも関連していることがわかった。
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認知科学 16(1)
ページ: 78-90