別の研究プロジェクトで比較可能なインターネット調査で得たデータと郵送調査で得たデータを入手することができた。この2つの調査から得られたデータの分布を相互に比較検討した。まず、それぞれのデータで従業上の地位と性分業意識の関係を検討した。年齢、学歴、性別をコントロールして両者の関係をロジスティック回帰分析で推定した。一変数の分布に限ってみれば2種類の調査で分布が異なることがしばしばあったが、ロジスティック回帰分析の結果得られたパラメータの推定値の大きさがインターネット調査と郵送調査で有意に異なることはなかった。同様の検討を、学歴やコーホートをコントロールして出身階層と初職の関連についても検討したが、同じ結果が得られた。すなわち一変数の分布に関しては違いがみられたが、関連の強さに関しては郵送調査とインターネット調査で有意に異なることはなかった。このような検討に先だって、関連する別のデータも分析し、データの分布について検討したが、上記の分析の妥当性が確認された。また初職の継続率や友人数、世代間移動表の分析などを予備的に行ったが、まだ十分な成果は得られていない。 このような結果からは、インターネット調査は、性分業意識のような一変数の分布の推定には問題が多いが、二変数以上の変数の関連の推定に関しては、あまり問題ないことが示唆される。ただし、もっといろいろな変数について検討する必要があるので、今のところは暫定的な結果である。
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