元来、今年度はインターネット調査を実施する予定であったが、昨年度に別の研究プロジェクトで郵送調査とほぼ同じ設計のインターネット調査を実施することができたため、今年度予定していたインターネット調査の実施は中止した。それに伴い、若年非正規雇用の実質的な分析を中心に研究を進めた。まず、居住地域・地域移動と非正規雇用の関係について検討した。インターネット調査は理論上は離島であろうと山村であろうとインターネットにアクセスできれば特段のコストなしに実施することが可能である。しかし実際には都市在住者に偏りがちであるという指摘もある。そのため、地域の特性と非正規雇用の関係を検討することは、本研究プロジェクトにとっても重要な知見をもたらしうる。分析の結果、関連する要因をコントロールすると、居住地域による非正規雇用率の違いは見られなかった。また、世代間移動についても検討した。父職と子の現職の関連を検討した結果、子供が正規雇用になるかどうかと父の社会的地位の間には一定の関連が見られたものの、既存の階層分類の場合ほど強い関連は見られなかった。さらに、賃金格差に関しても予備的分析を進めた。今回は国際比較を行い、正規雇用と非正規雇用の間の賃金格差は、関連する諸要因をコントロールした場合、台湾で最も大きく、韓国で最も小さかった。日本は両者の中間であった。その原因は分からないが、韓国の場合、正規雇用が非正規雇用並みに不安定であり、台湾の場合、非正規雇用の割合が非常に低いという事実と関連があると考えられる。
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