研究課題/領域番号 |
19653060
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研究種目 |
萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大渕 憲一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70116151)
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研究分担者 |
佐藤 弘夫 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30125570)
三浦 秀一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80190586)
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キーワード | 日本の思想 / 正義 / 公正 / 儒教 / 仏教 / 神道 / 丸山真男 / 義理 |
研究概要 |
日本人の価値観や社会的行動に影響を与えてきた伝統的思想として、神道、仏教、儒教に注目し、それらにおいて正義・公正観念がどのように論じられてきたかを明らかにすることを目的に、文献調査を行った。これを通して、まず、各思想の主要概念を抽出したところ、儒教については善悪・正義、政治・治世、世界観など6概念、仏教ついては人生観、世界観、処世訓などに関わる13概念、神道についてはもののあわれ、和と縁、古道・楽観主義など10概念が得られた。このほか、日本思想の重要な研究者である相良亨が上げた超越者の否定、死の穢れ、死の美化の3概念、丸山真男の指摘した活動・作用の神化、集団的功利主義、真情の純粋性の3概念、源了圓の論じた義理の6概念、それに明治の教育勅語で強調された臣民思想も伝統的思想を成すものとして取り上げた。次に、現代の日本人が、これら伝統的思想をどの程度支持しているかを明らかにするために、上記の諸概念を測定する項目を作成して日本伝統思想尺度の試版を試みた。仙台市に居住する成人680名を無作為抽出し、郵送調査によってこの尺度に6段階評定で回答を求めた。予備的分析ではあるが、(1)儒教概念のうち政治・治世、人間関係に関する概念はやや支持された、(2)仏教概念の中では、無常観と処世訓の一部の支持率が高かった、(3)神道の心情(はかなさ、もののあわれ)や人間関係(和と縁)に関わる概念は比較的支持された、(4)丸山真男の諸概念の比較的支持されたが、集団的功利主義は低かった、(5)源了圓の義理概念は総じて中程度の支持だった。全体としてみると、伝統的思想のかなりの部分が回答者によって一定程度支持されており、調査結果は、それらが現代日本人の価値観とまったく異なるものではないことを示している。
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