研究課題
現代日本人の伝統的価値を測定するために、我々は、仏教、儒教、神道・国学に含まれる人生観、世界観、処世観などを抽出して130項目から成る尺度試案を作成した。因子分析によって信頼性の高い因子を抽出して、それらに高負荷の76項目から成る伝統的価値尺度(JTVS)を作成した。これは仏教4次元(輪廻と法力、修身と慈悲、厭世主義、空と超俗)、儒教4次元(忠孝と義務、天意・天命、恥と世間、賢君思想)、神道・国学6次元(社会的調和、相対主義、集団的功利主義、楽観主義、ものの哀れ、歴史の内発性)から構成されるものである。これらの伝統的価値がどのような属性を持つ人たちに支持されているのかを調べるために、全国7地区から成人2400名を無作為抽出して郵送法による社会調査を実施した。961名から回答を得た(回収率40.0%)が、その分析結果は、社会的に恵まれない境遇にある人ほど、即ち、低学歴、低収入、無職の人たちが伝統的価値を強く支持するという傾向を示した。この結果に対する一つの解釈は、恵まれない人たちが不遇な現状に対する個人的責任を軽減するために、超人間的力の作用や集団優先規範を強調するというものである。別の解釈は逆の因果関係を仮定するもので、伝統的価値を強く持つ人たちは個人的達成志向が低いと仮定するものである。そうした人たちは、学業や職業上の成功を目指すアスピレーションが低いので、社会的上位移動が少ないという可能性がある。政治的態度との関連では、自民党支持者は社会秩序を優先する儒教的価値を、社民党支持者は周囲や自然との調和を求める脱近代的価値を支持する傾向があった。共産党支持者は全般的に日本の伝統的価値に対して拒否的で、民主党支持者の反応は平均的で特徴がみられなかった。
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文化 73(印刷中)
Asian Journal of Social Psychology (印刷中)
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国際科挙学研討会-第五届"科挙制与科挙学"学術研討会-報告論文集
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