研究概要 |
就業は個人の人生にきわめて大きな意味を持つため,就業活動支援はきわめて重要である.そのための手法として,近年ソフトコンピューティングの一手法として注目されているラフ集合が有効であると思われる.そこで,本研究では,Z. Pawlak(1982,1991)の提唱したラフ集合の心理学における実用化を図るとともに,若年層の職業未決定問題,職業人生設計に関する問題,中高年中途離職者の再就職活動において硬さなどの心理的要因が及ぼす問題に関して,日本及び韓国において調査を行い,ラフ集合を用いて分析,考察することを目的とする.本年度は,ラフ集合のプログラムを実装し,データ分析に応用することを試み,また従来より筆者が行ってきた質的比較分析(プール代数分析)による手法とラフ集合による手法を比較するために,大学生の職業意識,職業人生設計などに関する質問紙調査データを質的比較分析とラフ集合アプローチの両者で分析を試みて比較考察を行った.現在,韓国における質問紙調査のために,以前の調査研究において共同研究を行ったことのある釜山の東義大学校(Dong-Eui University)劉亨淑(Hyung-Sook You)准教授の協力のもとに韓国語版作成を行っている.また,中高年齢者に関しても,過去に収拾した質問紙データを用いて,これまでの職業生活を支えてきた動機づけ,心の硬さ,再就職活動意識に関する関係について,ラフ集合による分析を進めている.今後は,本年度に得られた知見をもとにして,質問紙調査を日本と韓国に実施して,両国における職業問題を明らかにして,その心理的支援のあり方を探る予定である.
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