観察研究:保育園(計6園)の0-1歳児クラスの乳児を対象に日常場面で子ども同士が関わる行動を観察しハイビジョン・ビデオ・カメラで撮影した記録映像から身体的コミュニケーションを行っているエピソードを抽出し、視線、身体の動き・向き・姿勢、相手との身体的接触・同調などについて分析した。結果と意義・重要性 1.本研究の観察データの範囲において最も早期では2か月児で既に他児に対する身体的接触による関心がみられ、その後、1歳後期ではお互いの合意に基づく協同遊びが出現し、言語がない段階でも上述の種々の行動を手がかりに相手の意図や欲求を読み取っていることが示された。2.このことから子ども同士が保育の場での日常生活経験を共有することが他者の心を読み取る能力の発達を促すことが示唆された。3.この時期の身体的コミュニケーションの発達の過程で、他者の意図や欲求の読み取り、トピックやスキーマの共有などが可能になっていくことは、その後の言語コミュニケーションの基盤として重要な発達であると考えられた。4.子ども自身が自ら相手の意図や欲求を読み取る必要がある子ども同士が関わる中でコミュニケーションの発達の様相を示すことができた点で、従来の多くの母子のコミュニケーションを代表とするような子どもの意図や欲求を読み取ってくれる大人を対象とする研究とは異なる意義がある。次年度の研究の予備調査:20年度の研究のための準備として、観察研究の協力園の一部において保育者を対象に、その園での観察映像をプロジェクターで提示し、子どもの行動についてきがついたこと、子ども同士の関わりおよび子どもと保育者の関わりについて日常に保育活動の中で注意していることなどについて、聞き取り調査を行った。
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