本研究は、大学教員と大学院生が、特定保育所と提携し、子どもや保育活動の観察・アセスメントおよびそれについて話し合いを重ねる中で、どのような参入の仕方が、双方にとって最もメリットのあるものになり得るかを探索的に明らかにすることを目的とするものである。今年度は前年度に引き続き、2保育所と連携関係を結び、それぞれに大学院生が定期的に通い、観察および保育スタッフとの協議、発達心理学の基礎的レクチャー等を通した研修支援などを行い、保育所の様々な問題(例えば、保育スタッフ同士のコミュニケーションの不足、専門的知識・スキル養成機会の欠落、外部リソースとの連絡経路の未開拓など)を掘り起こすと同時に、それらに対するあり得べき対応策について保育スタッフ、大学教員、大学院生で総合的に検討を行った。また、保育現場との実践的な連携を通して、大学院生が子どもの発達に関する認識をいかに変え得たか、また、研究テーマにその経験をどのように活かし得たかなどについて大学教員が大学院生に面接を実施し、発達心理学の種々の研究知見を保育実践に有効に生かすための専門的な眼識力が、こうした一連の活動を通して効率的に養われ得る可能性について示唆を得た。しかし、その一方で、保育スタッフ側からの大学院生や大学教員へのアプローチは、比較的表面的な知識提供を求める場合が圧倒的に多く、具体的なケースに関して双方が自発的に意見交換をなし得るような機会は相対的に少なく、その意味で、大学院生や大学教員の現場への参入の仕方に一定の課題を残したと言える。
|