研究概要 |
本年は,大阪府A市の小・中学校の障害児学級に過去に在籍し,現在は卒業した児童・生徒とその保護者,および障害児学級担任の教師,校長・教頭等の管理職,教育委員会の担当指導主事を調査協力者としてインタビュー調査を行った。A市は大阪府郊外にある人口約10万の都市である。市内には小学校11校,中学校5校がある。筆者はこれまで1989年から巡回相談に関わってきた。こうした蓄積をもとに,障害児学級に在籍していた卒業生とその保護者に連絡を取り,3組の親子についてインタビュー調査を行い,在学中の面談の記録も参照しながら,それぞれの家族のライフストーリー(Bertaux,1981)を再構成した。また,併せて当時の担任にもインタビューを行うことで,家族のライフストーリーの"拡充"を行った。その上で,家族がマクロ〜ミクロの生態学的な環境の制約の中でどのように育ってきたのかを検討した。また,教師に関しては,知的障害学級・情緒障害学級・肢体不自由学級・通級の言語障害学級の担任としてそれぞれ約20年間にわたって障害児教育に携わってきた教員,および通常の学級担任として障害児を受け入れてきた経験を持つ指導主事,小学校長,教育委員会で長らく市全体にわたる障害児教育に関する企画・立案を担ってきた指導主事の計8名に対してインタビュー調査を行い,教員の視点からのA市におけるミクロ〜マクロレベルでの障害児発達についての生態学的な環境を再構成し,その特徴を分析した。
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