本年度の主な目的は二つであった。 第一は児童や生徒のADOG(Academic delay of gratification)を客観的に測定できる尺度を開発することであった。これについては、基本的な尺度を構成し、小学生や大学生を対象に、その尺度の妥当性を検証するデータ収集を行い、分析を行った。しかし、分析の結果、初期のADOG尺度には、時間的な要因や課題に取り組む価値観などの変数を組み込んでいなかっただけに、その尺度に生態学的妥当性の面で限界があることが判明した。そのために開発しつつあるADOG尺度の精度をさらに高めるための修正を行い、目下、データ収集を行っている所である。 第二はADOGの強さのレベルと学業場面での学習方略に対する認識や実際のパフォーマンスとの関連を、「動機づけ」「自己効力感」「メタ認知」「知的資源の利用」「心的時間の配分」などの観点から検討することであった。ADOGはオンゴーングでの「自分の学習状態に応じてその後の学習時間配分の仕方に重要な役割」を果たし、そこには自己の学習過程に対する省察的な思考(メタ認知)が密接に関連していることが分かった。
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