研究概要 |
本研究課題は、定年退職を迎えた中高年者がどのように退職を迎えどのように生活を変化させていくことが心理的健康を維持・増進するのかについて、「国立長寿医療センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の縦断調査データを用いて検討することを目的としている。 1.具体的内容 平成21年度には、(1)縦断調査データの収集、(2)心理的健康に関する分析、(3)定年退職後の就労状況と仕事コミットメントに関する分析、(4)研究発表を行った。 (1)縦断調査データの収集:NILS-LSAの第6次調査として、半構造化面接及び自記式調査票によりデータ収集を行った。調査対象は1,182名であった。収集した変数は、心理的健康の指標(知能、抑うつ、生活満足感、自尊感情)、定年退職経験の有無とその後の就労状況、社会活動、余暇活動への参加等である。 (2)心理的健康に関する分析:これまでに蓄積済みのデータを用いて、心理的健康に関する縦断的分析を行った。特に、中高年者の知能について縦断的に検討した結果から、定年退職後にあたる60代において、結晶性知能や短期記憶は高く維持される可能性があることが示された。 (3)定年退職後の就労状況と仕事コミットメントに関する分析:定年退職後の就労状況について集計した結果、定年退職経験者の67.1%が退職後も就労した経験があること、定年退職後にあたる60代以降の仕事への満足感は、40代、50代よりも高いことが示された。 (4)研究発表:上述の結果の一部について、学会にて研究発表を行った。 2.意義・重要性 縦断調査データの収集により、次年度からは、全6回の調査データを用いた10年間の縦断的解析を行うことが可能となる。また、分析によって明らかにされた定年退職期の心理的特徴の知見は、今後,定年退職前後の変化について縦断的に検討する際の資料として有用となる。
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