本研究の目的は、「笑い」や[ユーモア」が果たす機能に注目し、"「笑い」や「ユーモア」が広汎性発達障害者(以下、PDD)との親密なコミュニケーションをとる重要な窓口となる"という前提に立ち、PDDの特性の一つである対人関係コミュニケーション障害への支援を図る新たな集団心理療法を開発することである。 そのために、本年度においては、「笑い」や「ユーモァ」の理解と生成に関する基礎的研究を遂行し、それらが生成する場面を積極的に集団心理療法の中に取り入れ、その中での対人関係やコミュニケーションの質的内容を詳細に分析し、日常の対人コミュニケーション能力や関係性の取り方にどのような変容が見られるかを検討した。 具体的には、20回にわたる集団心理療法のセッション場面についての逐語録をもとに分析を行ない、PDD者が、「笑い」や「ユーモア」を理解/産出する刺激事象や内容や構造にはどのような特性が見られるか、さらにはどのような個人差が見られるかの検討をすすめた。また、「笑い」「ユーモア」の発達に関して文献レビューもすすめており、その一部は翻訳書(分担訳)として出版予定である。
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