本年度は、言語的な情報によって標的属性を被験者に与えた際に見られる、視覚的注意の配分の促進効果を、ターゲット検出の有効性、および、妨害項目の無視の効率の観点から、視覚的な探索課題を用いて検討した。また、非言語的な情報の関与を調べるために、手がかりが与えられた際のターゲット属性の切り替えコスト、および、直前の試行からのキャリーオーバー効果との関係を同時に調べた。その結果、言語情報を与えた試行の直後のみならず、その次の試行まで課題切り替えコストの減少が見られた。この結果は、言語情報がターゲットの検出に関わる注意の配分に有効であることが明らかになった。また、第2試行まで促進の効果が見られたということは、言語的な手がかりでは、完全な意の配分が不可能であることを示唆している。さらに、手がかりと直前の試行とのキャリーオーバー効果の関係を調べたところ、両者の間に交互作用が見られた。このことから、言語的な注意制御メカニズムと非言語的な言語制御メカニズムが共通であることを示していると考えられた。さらに、妨害項目の無視効率は、手がかりが与えられた後、試行が経過するとより低下した。このことから、言語的な注意メカニズムは、注意の配分の持続的な側面に関与していることを示唆した。次いで、この点を確認するために、構音抑制を課した実験を実施した。その結果、構音抑制を与えると、妨害刺激からの干渉効果が増加した。この結果からも、言語的な注意制御機構が、注意の持続に関与していることが明らかになった。これらの結果から、言語的注意制御機構が、非言語的な制御機構とは、一部、独立である可能性が示された。
|