多文化主義、多文化教育が盛んであると言われているアメリカにおいても、ステレオタイプな文化観の危険性を認識し、多文化に対する気づきをもち、文化の多様性に柔軟に対応できる教員はきわめて少数であり、そうした少数の教員たちの文化に対する態度がいつ、どこで何を契機に形成、獲得されたものなのか、背景要因とのかかわりを詳細に解明した研究成果がないため、それを解明すること、さらに文化の多様性にひらかれた教師たちの大学における教育実践がどのようなもので、それが学習者にどんな影響を与えるのかを明らかにすることは、日米両国の教育現場において、多文化化の時代にふさわしい人材育成・教員養成のあり方を考える上で、きわめて重要である。 本研究では、アメリカの大学で日本語教育に携わる教員を対象とする。アメリカの大学教員を対象にインタビューや観察を実施するのは、多文化教育や民族・人種問題の経験が豊かな米国や米国の高等教育における取り組みから、学ぶべきものがあるかどうかを探究するためである。また、日本語教師に特化した研究を行うのは、彼らが、教員の中でも日常的なレベルで外国人との接触が多く、外国人学習者に対して少なからぬ影響を及ぼす立場にありながら、自文化中心主義的な傾向が強いとされ(吉野1997)、教師の中でもとりわけ文化の多様性に対する柔軟な対応が火急に求められる存在だからである。 研究実施計画のとおりで、平成19年度は、海外調査を伴う3年間の研究の初年度にあたり、文献やインフォーマントからの情報に基づいた研究対象者の抽出、及び、海外でのフィールドワークの立案、及び準備期間にあたり、具体的な研究成果というものをここで示す段階ではないが、研究協力者との折衝で準備が進んでいる。
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