言語的マイノリティ生徒の教育に関する研究は、当該生徒がなにゆえ学校において「失敗」するのか、すなわちかれらが学業上芳しくない成積をとるのは何に原因があるのかという「失敗要因」の探求に焦点化して進められてきた。本研究は、授業言語を母語としない言語的マイノリティ生徒の教育に関する研究のパラダイム転換を意味するレジリエンシィ(以下、resiliency)研究について、最近の米国における研究動向を明かにするとともに、日本における言語的マイノリティ生徒教育研究の新たな方向性を示唆することを目的としている。米国における教育分野のresihencyに関する研究成果については以下のように要約できる。resilient生徒とnonresihent生徒を明瞭に分つ要因として、教室内での状況やプロセス(たとえば、学習状況や教授方法)と動機づけに関する諸要因が明かになった。resilient生徒は自らが置かれている環境が積極的肯定的な教授および学習状涜にあると感じており、また教室内の状況についての満足度が高い。これに対して、nonresilient生徒は、教室での学習活動に困難を感じる度合いが高くなっている。このような相違は、すべての生徒にとって最適な学習環境をもたらすという点において、重要な示唆を提供するものと考えられる。日本における言語的マイノリティ生徒に関する調査においては、以上のような要因に加えて、学校や教室内における教員のサポートおよび家庭内における家族によるサポートがresiliehcyをもたらす上で重要な要因であることが確認された。
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