研究概要 |
当該年度では、平成19年度の成果の更なる発展と、DNA複製の不均衡進化モデルを簡単に理解できる教材開発を目指した基礎研究を実施した。(1)DNA複製現象を簡単に理解するための教材の開発においては、19年度の成果を発展させ、現在作成中の出版教材の1単元として採用し得る精度のDNA可視化を達成することができた。(2)DNA複製や遺伝情報複製ならびにセントラルドグマのモデル教材の開発においては、19年度において行った、モデル教材開発のための効果的なカリキュラムの検討結果をもとに、出版教材の開発に関する検討を行い、上記(1)の成果と併せた出版教材の内容(目次ならびにその構成)を詰め、本研究が終了した後、平成22年度に出版することが内定した(出版社も内定済)。具体的には、19年度において検討した効果的な四つの単元のうち、分子生物学と人間との関わりを中心に、中高生、そして文系の大学生をも対象として最先端の生命科学が効果的に学習できる出版教材となる。(3)DNA複製の不均衡進化モデルを簡単に理解できる教材の開発においては、(1)有胎盤類と有袋類それぞれの進化の違いとDNA複製の不均衡進化との関係がよくわかるモデル教材の開発において、以下の成果を得た。まず有胎盤類と有袋類のDNA複製システムに内在する突然変異誘発率の理論的な相違を明らかにした(Takemura, M. 2008. Bio Systems92,117-121)。更に、三種のDNAポリメラーゼ分子種(α、δ、ε)の発現プロファイルを有胎盤類と有袋類で比較検討した結果、有袋類のDNAポリメラーゼα発現量が有胎盤類のそれよりも高いことを示唆する実験データを得た。これらの成果をもとに、平成21年度において、DNA複製の不均衡進化モデルを中心とした新しい分子生物学教材の開発を達成することを目指す。
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