当該年度では、平成20年度の成果の更なる発展と、DNA複製の不均衡進化モデルを簡単に理解できる教材開発を目指した基礎研究を実施した。(1)DNA複製現象を簡単に理解するための教材の開発においては、20年度の成果を発展させ、DNA複製可視化実験をさらに高等学校の教育現場における生徒実験として行なうことができるような改良を行った。また、DNAポリメラーゼの酵素反応によるヌクレオチド重合と、それに伴う自然発生的な突然変異が起こるメカニズムが理解できるようなモデル教材の開発を行い、試作的なモデル教材を作成することができた。(2)DNA複製の不均衡進化モデルを簡単に理解できる教材の開発においては、以下の成果を得た。まず、20年度に得られた成果をもとに、有袋類DNAポリメラーゼαの有胎盤類との生化学的、分子生物学的な相違点を解析し、いくつかの特徴的な性質を見出した(Takemura et al.投稿準備中)。また、上記(1)のテーマとも関連して、DNAに生じる突然変異が生物の進化にいかに関わっているかを生徒が簡単に、かつ正確に理解できるモデル教材の開発を行い、試作的なモデル教材を作成することができた。これらの萌芽的な研究成果をもとに、平成22年度から3年間の予定で内定した基盤研究(B)(課題:複製モデル教材ならびに進化教育教材の開発研究を中心とした新しい生物学教育の展開)において、DNA複製と生物進化、ならびにそれらを結ぶ分子生物学的メカニズムに焦点を当てたモデル教材、出版教材の本格的な開発研究を行っていく予定である。
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