研究概要 |
本年度は「教師の,児童の方言による発話に内在する個々の微妙な差異を聞き分ける力に支えられた教授話法の在り方を明らかにすることで,人間関係を開き,確かな国語の力を育成する話しことばによる国語教室の構築をめざす」という目的のもと,研究を行った。研究の成果は以下の通りである。 具体的内容:(1)国語科の学習における児童の発話をビデオで記録するとともに,それを文字データ化し,方言による発話の有用性について分析し,考察を図った。(2)学習の状況を単に記録するだけではなく,学級担任教員と連携をとり日常の学習指導の意図や,その指導による児童の他の場面での発話の状況をインタビューによって聞き取った。(3)児童の授業中における挙手をしない発言やつぶやきなどからも考察を図った。(4)担任教員のつぶやきや指導中の指導者としての内言(瞬時の評価も含む)を記録した。なお,研究協力校の都合により,調査対象を京都市内小学校から京都府南丹市立小学校に変更するとともに,調査期間も変更した。また,記録用機器についても新機種発売のため,当初の予定を変更して購入した。 意義:本研究によって,教室における談話は,学習者個人の経験的な文脈,学習場面における状況の文脈,学級における集団の関係性による文脈等によって構成されていることを明らかにすることができた。また,談話の記録を詳細に分析することで,方言の微妙な有用性が働いているからこそ,複数の学習者の参加による教室談話がまとまりながら成立すると考えられる。この部分には,継続した考察が必要であるが,ここに本研究の意義があると考えられる。 重要性:本研究は一般化を図る類のものではない。しかし,談話の構成者である教師の教育話法としての聞解力の機能や方法として,一般化に導いていくことは可能である。本研究が,教師の指導力である「教師の聞く力」の向上のための一助になると考えられる。
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