自閉症児者に多く見られるサヴァン症候群について、まずサヴァン・スキルに関する研究論文を収集・検討し、最新の情報を整理した。また、行動問題を示す自閉症児者についての情報を収集した。さらに、粘土造形にサヴァン・スキルを示す1名の広汎性発達障害児を対象に不得意とするデッサン・スキルの指導を行い、障害特性に合った指導方法の在り方を検討した。その結果、次のことが明らかになった。 1.サヴァン・スキルには記憶の関与が大きい。 2.激しい行動問題を示す自閉症児者の中にもサヴァン・スキルに近いスキルや優れたスキルを有する事例があり、当該のスキルを遂行する機会が与えられることによってそのスキルが発見される場合がある。したがってサヴァン・スキルのアセスメントツール作成では、生活史におけるスキル発揮機会の詳細な検討が必要となる。 3.行動問題を示す自閉症児者の支援においては、優れたスキルや好みの活動を活用した支援が有功であることが少なくない。 4.デッサン・スキルを指導した事例では、こだわり等の障害特性に配慮した指導方法を行うことによって、対象児の混乱を引き起こすことなく、また意欲的に取り組むことが可能となる。 これらの成果のうち、特に2と4についてはこれまでの研究では十分に明らかになっておらず、行動問題の予防や改善はもとより、スキル形成やその向上について、今後の研究を進める上で意義のある知見を得ることができたと考えられる。
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