研究概要 |
学校教育法の一部改正により、特殊教育にかわって特別支援教育が名実ともに開始となった、本研究の目的は、特別支援教育の新たな対象であるLD, ADHD,高機能自閉症等という発達障害児の「不器用」の実態を、多角的・多面的に明らかにすることである。不器用は、学習、遊び、生活など学校生活全般に現れてくるもので、この影響で自己肯定感が低下するなどの問題を示す児童生徒が少なくない。本年度は、その実態を予備的に調べることを主たる目的とした。不器用を調べる視点として、運動の速さと正確性の関係という側面、運動の経済性という側面に焦点を当てた。特に、本年は前者に注目した。これは心理学的にはもはや古典的なテーマに属するが、こうした視点で不器用を見たものはない。その結果、運動の速さと正確性は両者が同時に成長発達するのではなく、両者にずれが生じながら発達すること、そしてまずは正確性が一定の状態になってから速さが伴うこと、同じ発達障害であっても、障害種別によって不器用のありようが異なること、更には、速さと正確性が一要因的制御ではなく二要因的制御になっている可能性も示唆された(つまり自由度が多く、効率的でない)。不器用を調べる方法論として、ペグボードなどは、速さと正確性の両側面を同時に測りうるものとして注目された。また、日常的な手指運動活動とのつながりでその機能を見る場合には、指定箇所にシールをできるだけ早くそして丁寧に貼るという課題が、参加児の動機も一定高く、注目された。次年度は、更に全身の動きまで着目するとともに、環境にある事物の影響などについても詳しく見ていく予定である。
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