研究概要 |
1.少年院在院生の発達的特性と矯正教育期間の自尊感情等の変容 ある少年院でのLD,AD/HDスクリーニングテストの結果、LD疑いあり=63.9%,AD/HD疑いあり=81.9%,LD,AD/HD共に疑いあり=56.6%であった。WISC-III知能検査の結果、VIQ=82.2±9.9(M±SD)、PIQ=82.2±9.9(M±SD)、FIQ=82.2±9.9(M±SD)であった。VIQ-PIQの平均の階差は6.8であり、有意な差が確認された(p<.05)。自尊感情は、入院時・出院時ともに少年院生がコントロール群より有意に低かった(p<.01)。攻撃性は入院時は少年院生がコントロール群よりも有意に低かった(p<.01)。しかしながら出院時に、少年院生の攻撃性の有意な高まりが見られた。その結果、出院時の少年院生とコントロール群では攻撃性に差がなかった。すなわち、少年院在院者の顕著で深刻な低自尊感情が明らかとなった。同時に発達の遅れ偏りなどとの密接な関連性も示唆された。 2.少年院在院者の逆境的児童期体験の調査結果 男子少年院在院者(N=116)と女子少年院在院者(N=70),及びコントロール群として一般高校生(N=540)に,児童期の不適切養育体験(虐待を含む)の調査を実施した.ACE(Adverse Childhood Experiences;逆境的児童期体験)質問紙を使用した.これは,虐待のカテゴリー(身体的・心理的・性的虐待,ネグレクト)と養育機能不全のカテゴリー(保護者の不在・服役歴・精神疾患の罹病、家庭内暴力など)に分かれている.年齢と性をマッチさせた一般高校生と比較して,少年院在院者の児童期の逆境体験は極めて深刻であることが明らかにされた.9つの質問項目の内,男子少年院在院者は約5〜22倍,女子少年院在院者は約4〜33倍経験率が高く,身体的虐待は特に深刻であった.男女少年院在院者で比較すると,心理的虐待や性的虐待の項目で女子の方が有意に深刻な状況であることが判った.
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