研究概要 |
平成19年度では,主に3次元トロピカルトーリック多様体上の交点重複度,およびトロピカルトーリック多様体の計算方法とグレブナー扇に関する研究を行った. 3次元射影トロピカルトーリック多様体内の3つの一般の曲面の交叉に関して,トロピカルトーリック多様体の境界の頂点における交点重複度を定式化することができ,公式を予想した.この公式に関して発見的証明は与えたものの,厳密な証明をするためには場合分けが煩雑となるため,現在は他の証明方法を検討している.この予想される公式は,計算機を利用して多くの例の場合に正しいことが確かめられた.また,この公式を導く過程で,トロピカルトーラス部分多様体上での交点重複度の公式から,トロピカルトーリック多様体の境界部での公式を導く原理が見えてきた.この原理は3つの一般の曲面の交わりの場合には確かめられているが,高次元のトロピカルトーリック多様体内の交叉についてはまだ未確認であり,来年度の課題として引き続き研究を進める予定である. トロピカル多様体はグレブナー扇の部分扇であるため,計算に直接利用できなくてもグレブナー扇の観点からトロピカル多様体を考察することは有用である.グレブナー扇を求めるアルゴリズムを調べる目的で,サイクルグラフに付随するある種のイデアルについて,組合せ論的にグレブナー基底を求めるアルゴリズムを与えることができた.その応用として,そのイデアルに関するグレブナー扇を求めた. 今年度は,研究の過程でトロピカル幾何に関する論文,書籍などの資料収集,および専門家との研究討論を行なった.今年度はトロピカル幾何の専門家であるミハルキン氏の来日もあり,有意義な討論ができた.
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