研究概要 |
大鹿と高山は5角形のフラット構造のタイヒミューラー空間を定義し,それと種数2の閉曲面のタイヒミューラー空間の間の同型写像を構成した.埋め込みになっていないような5角形についをDeveloping mapを通じて,タイヒミューラー空間の元と見なす方法を与えた.一般の多角形についてのこの理論を拡張するための障害となるものが同じ境界をもつ相異なる円板のはめ込みであることを明らかにし,これを回避するための角度のパラメータを与えた.大鹿はMSRIでのタイヒミューラー空間に関する研究集会において,Gabriela Schmithuesenと議論した際に,これらの理論はVeech groupを「折り紙」と呼ばれるtranslation surfaceを通してとらえる理論と密接な関係があることが判明した.そこで,帰国後,translation surface上のSL(2,R)作用の視点を持ち込んだ研究を開始した. 一方盛田は平面上の有界領域でいわゆるeclipseを持たないようなものを考え,そこでのビリアードの問題において現れるゼータ関数についての研究を推し進め,その上半平面全体への実軸での条件を課した上での有理型拡張可能性を示した.これはこのような領域でのビリアードに関するlength spectrumから定まるゼータ関数を考えたとき,それが同様の有理型拡張性を持っていることを導くことがわかった.ビリアードの問題とtranslation surfaceは等価な問題であるので,ビリアードの力学系的解析が進むことは,translation surfaceの理解に貢献する.
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