研究概要 |
今年度は本研究課題の最終年度であり,「情報工学への幾何学的アプローチ」をテーマとして,研究代表者・大仁田と連携研究者・松添博は,2010年2月20日(土)-2月21日(日)に大阪市立大学数学研究所情報幾何関連分野研究会2010を組織・開催した。泉泰介(名工大),竹内一郎(名工大),金森敬文(名大),和田山正(名工大)らの情報工学系の研究グループのメンバーを招聘し研究発表講演や専門的知識の提供をお願いした。小原敦美(大阪大),野田知宣(大歯大),田中勝(福岡大),高津飛鳥(東北大)らによる活発な研究発表や議論・情報交換も行われ,研究課題の大変有益な推進をもった。連携研究者・松添は,情報幾何学の理論構築に関して,統計多様体の幾何学や,その一般化について取り組んだ。特に,捩れを許す統計多様体の幾何学や,Tsallis統計学との関連などについて結果を得た。野田知宣は,有限次元および無限次元シンプレクィック幾何学の立場から統計多様体や無限次元極大指数型モデル等を新たな知見を与えている。変形・モジュライ空間や変分問題の方法は,無限次元微分幾何において不可欠であるが,大仁田は,佐々木多様体の極小ルジャンドレ部分多様体の変形の研究を,連携研究者・高橋太は,臨界型変分問題にあらわれる種々の非線形楕円型方程式の爆発解のその形状や非退化性などの定性的性質の研究を進めて,本研究課題の推進に寄与している。連携研究者・黒瀬俊は,幾何的不変量が可積分系方程式に従って変化するような曲線の運動について研究を行い、対象となる曲線全体のなす無限次元空間上に適切なプレシンプレクティック形式を与えることで,いくつかの代表的な可積分系を、無限次元プレシンプレクティック空間上のハミルトン系,さらに,二重ハミルトン系あるいは多重ハミルトン系として記述されることを数学的に厳密に考察している。また,リー群を用いた独立成分解析の微分幾何学的な側面に関して甘利俊一の論文について,大仁田,松添は,本研究課題の観点から検討するなど,今後も興味は尽きない。
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