研究概要 |
トポロジー的手法により、材料科学の新規機能材料作成法において重要な自己組織化原理の数理的基盤の方法論の基盤の確立を目指すのが本研究課題の目的である.本年度の成果は次の2点にまとめられる. 1.Computational Homologyをブロック共重合体というポリマー系の挙動を記述するモデル方程式に対し適用し,その有効性を示した.これは材料科学における新たな「非侵襲的数理測定法」を確立する第一歩として重要な成果である.具体的にはまずこのポリマー系の成分比等のパラメータに関する相図を再確認し,ある安定形状の初期値を設定後,別のパラメータ値にクエンチし,その時間発展を見る.同時にそのべッチ数の変化を観察する.これにより最終状態のモルフォロジーのみならず、例えばラメラ形状からヘキサゴン形状への遷移ダイナミクスにおいて穴あきラメラを経由することがベッチ数の変遷から明らかになる.この途中の3次元形状についての幾何情報は他の手法では得られないものである.これにより遷移ダイナミクスに関する相図を作ることが可能となった. 2.3次元空間でのGray-Scottモデルの時空カオスダイナミクスのComputational Homologyによる判定を行った.通常のリアプノフ数などの判定法に加え,この位相的量の空間に射影して見ることで,間欠的運動が明確に示されるのみならず,ベッチ数が与える情報により,その幾何的構造についても多くの内容が反映されることが示された.これは反応拡散系における複雑時空パターンの新たな判定法の確立にもつながると考えられる.
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