研究概要 |
1. 実空間構造の直接観察実験だけでなく, より広く普及した散乱実験で得られる逆空間データから実空間像を再構成するためにリバースモンテカルロ法シミュレーションを行った. ここでは, 複数の入射光軸方向の2次元散乱パターンを用いて, 複雑な異方性を示すダブルジャイロイドに対する構造推定を行った. リバースモンテカルロ法は, 実験観測された散乱関数と仮想粒子配置の散乱関数の差を小さくする空間3次元粒子配置を計算機上に推定する分子シミュレーションであり, 制御パラメータや光軸方向の選び方によっては, 極小状態の構造に落ちこむことがある. これらの極小構造は最小構造に似ていることも多く, 見た目で区別することができない. そこで再構成された粒子配置の方体近似にCHomPソフトウェアを適用してBetti数を評価し, 適切なパラメータ条件を探索した. ダブルダイヤモンドなど, 他の3次元構造についても, 散乱条件にあった入射光を選ぶことで再構成できた. 2. マイクロCTで得られた骨微細構造の骨梁連結性を定量評価するための予備的考察を行った. 連結性の減少は骨強度に直接影響するとされ, 骨梁の断絶が起こると再び回復させることは困難と考えられており, 薬の治療効果とその可逆性の関連から注目されている. 3次元格子上の連続密度場データについて, 閾値処理により二値化したビットマップデータを用いた. 3次元ビットマップデータの構成要素(ボクセル単位)を代数として表す計算ホモロジー(Computational Homology)理論に基き, 構造の位相的性質であるベッチ数(Betti numbers)を精密に計算した.
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