研究概要 |
大規模な科学技術計算では,膨大なデータ処理や探索処理を行うために並列分散方式に基づく算法の開発および支援ツールが必要となる.本研究は,Krylov部分空間法の収束を改善する行列の前処理に関して,近似逆行列に基づく新しい算法を提案し,並列計算機への実装に関する研究を行った.特に,QCD問題で現れる数十万元の行列を持つ大規模な連立1次方程式の計算においては,逐次計算による数値解析的な手法では,計算時間の面だけでなくメモリー領域の面においても破綻を来たす. そこで,近似逆行列の計算に2レベルのAISM法(シャーマン・モリソン法による近似逆行列の計算)を用いて,並列計算機向きな算法の修正法を構成し,計算時間の改善を行った.このような計算を行う理由は,一般的に2次元の場合,疎な行列の近似逆行列を求めるロストは,ほぼ行列の2乗に比例するため,いくつかの次元の小さい行列を計算することによって,総計算コストを軽減することが期待できるからである. (1)グラフ分割法(pmetis)を利用して並列計算向きに行列を再構成 (2)AISM法を利用して2レベルの近似逆行列を構成 (3)Krylov部分空間法+2レベルの近似逆行列を利用して並列計算を実行 SGI社のORIGIN2400にMPIを利用して上記算法を実装した数値実験の結果,近似逆行列の計算は16台のPE上で最大約136.72倍の速度向上が得られた.
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