研究概要 |
ランチョス法は共役勾配法と同系列の算法ではあるが,一般的に言えばKrylov部分空間法の中で対称問題を解く算法の1つであり,不定値な行列に対しても数値的に安定した算法でもある.我々は,この算法の基礎概念である直交化を用いて,非対称行列系の問題に対しても有効となる新しいソルバーの研究開発を行った.特に,悪条件問題(離散化行列の条件数が極端に悪い)に対しても安定して高速で高精度な近似解を得ることができる新しいKrylov部分空間法の提案とそのソフトウェア開発を行った. 近年,我々はGMRES法で生成されたKrylov部分空間に新たな関数空間を付加する技法(これをaugmentationという)を取り入れ,高速に近似解の精度を向上させるaugmented GMRES法の有効性について以下のような新しい算法の提案と悪条件問題に対しても安定して近似解を構成可能な有効性を示した. (1)RRGMRES法の収束性を解析しRRGMRES法で生成されるKrylov部分空間に付加する低次関数空間を自動的に選択決定する適応的な手法を開発した. (2)RRGMRES法のリスタートと残差ノルムの収束性を解析し,適応的にリスタートする技法を開発した. (3)新しいRRGMRES法の有効性を並列計算機SGI Altix450への実装を行い,悪条件問題に対して算法の有効性を評価し,現在、一般ユーザ向けにソフトウェアの提供の準備を行っている。
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