研究概要 |
ユークリッド空間内の任意の領域上の正調和関数を考察した.境界の一部分で消えている正調和関数に対する境界Harnack原理(正調和関数の比の比較性)とCarleson評価(正調和関数の有界性)の同値性を導いた.また,比較原理を用いることにより,ユークリッド空間内の滑らかな領域でP-調和関数に対する境界Harnack原理を導いた.これは非線型な結果である.さらに容量密度条件の下で,調和測度がダブリングになる領域を特徴付けた. 複雑領域上のDirichlet問題についてポテンシャル論の観点から考察して,本にまとめた. その内容は,初等的な解析学に始まり,掃散,Perron-Wiener-Brelotの方法,容量,Choquetの可容性,Martin境界,Fatou-Naimの定理を基礎とし,複雑領域のポテンシャル解析を概観すると共に具体的な問題について詳しく論じた.境界Harnack原理とCarleson評価のGreen関数による表現を与え,擬双曲距離によって定義される領域やHolder領域に(全体的)境界Harnack原理を確立した.これは平易な解析的手法のみで境界Harnack原理をするもので,Bass-Burdzyによる確率論的手法を完全に解析に置き換え,その本質をより明らかにするものである. 以上の線形ポテンシャル論の深い研究により,非線型方程式の理想境界への基礎を固めることが出来た.
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