研究課題
萌芽研究
グラフ(有限または無限)に様々な行列や作用素(隣接行列・Q-行列・ラプラシアン・推移行列など)を付随させて、そのスペクトルからグラフの構造を解き明かそうというのがグラフのスペクトル解析である。最近、新しいアプローチとして量子確率論的な手法を導入されてきたが、これは(a)多様な独立性(b)量子分解法(c)分割の統計、を柱とし、古典的な(可換の世界の)問題を非可換な世界を経由して解決するという点において興味深いものとなっている。本研究では、量子確率論的手法をランダムグラフ(複雑ネットワークのモデルを含む)に適用できる形に拡張することを目的としている。本年度は、1)ランダムグラフに適用できる形に量子分解法を発展させ、2)ランダムグラフの希薄極限のスペクトル密度を導出することを目指した。そのための基礎資料の収集と研究分担者との共同研究を開始した。とりわけ、複雑ネットワーク模型の草分けであるワッツ・ストロガッツ模型について精査し、計算機シミュレーションには適しているが、解析的には困難な構造をもっていることを見た。そこで、ランダムグラフ的なアイデアに基づいて修正したモデル(一般化エルデシュ・レニーモデルと呼ぶ)を構成し、スペクトル分布のモーメントを組合せ論的に表示する公式を得た。その密度関数の具体形を求めることは興味深い課題として継続研究中である。なお、成果の一部は、ポーランド・バナッハセンターで開催された国際会議で発表した。
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