研究概要 |
ニュートリノ実験に使用可能な液体シンチレータの開発を目指し,液体シンチレータの開発を行った.特にLiを含有した液体シンチレータの開発を行った.Li6は中性子に比較的大きな反応断面積を持ち,α崩壊するため,ニュートリノ反応(ν+p→e_++n)の中性子と陽電子の跳飛角度相関から,ニュートリノの進入角度を(統計的に)測定できる.詳細なシミュレーションによると,他の原子(例:ホウ素)では,高エネルギーガンマ線を発するため,事象点を精度よく決定できないことが分かった.また,Liを選択した場合,Li6を液体シンチレータ中に0.15%溶解させる必要があると判明した. Liはアルカリ金属であり,極性が大きい.一方液体シンチレータは有機溶媒が主成分で極性がなく,Liのような物質を液体シンチレータに含有させるのは容易でない.過去の研究成果を詳細に調べていくと,界面活性剤を使用して,Liの水溶液を液体シンチレータに含有させた例があることが判明し,この例を参考に,界面活性(ポリオキシレンオクチルフェニルエーテル,POE)を使用して,研究を行った。POEは化粧品等によく使用され,少量で優れた界面活性の力を有し,無色透明で,大量生産可能な化学物質であることから,研究対象の候補の1つとして採用した.この結果,Li6を0.03%溶解させることに成功し,一方でその液体シンチレータは透過度が65cmであることが分かった.目標とするLi6含有量に到達せず,また,ニュートリノ研究では非常に大量の液体シンチレータを使用するのであるが,その目的に比べ,透過度は十分ではなかった.これらが,今後の研究課題である. また,中性子と陽電子の角度相関を測定するためには,陽電子の事象点も精度よく測ることも必須である.この目的には.原子数の大きな物質を液体シンチレータに溶解させればよい.そこで,ヨウ化ヘキサンをベースに,プソイドクメンとジフェニルオキサゾールを混合した液体シンチレータを作成し,その性質を調べた.この液体シンチレータは液体シンチレーチとして機能するが,何らかの原因で黄色に変色し全く光量が無くなってしまう現象が見られた.これらの課題を解決すべく研究を行った.
|