研究概要 |
次世代加速器の基礎研究用に開発されたテーブルトップシステム"S-POD (Simulator for Particle Orbit Dynamics)"を用いて,イオンプラズマのドップラーレーザー冷却実験および線形コヒーレント共鳴の誘起実験を実施した。前者の実験には一価のカルシウムイオンを利用した。レーザー周波数を正確にコントロールするためのシステムを完成させると共に,誘起蛍光観測用の光学系を改良した。これにより,トラップ軸方向のプラズマ温度を100K以下まで下げることが可能となり,イオン閉じ込め時間の大幅な改善につながった。また,軸に直交する2自由度の冷却効率を高めるため,レーザーを斜め方向から入射できるよう装置のセットアップを修正した。その結果,少数個(<十数個程度)のイオンをほぼドップラー限界まで冷却することに成功し,1次元の紐状クーロン結晶を観測した。 線形コヒーレント共鳴の実験には主にアルゴンイオンのプラズマを用いた。1MHzの高周波四重極電場に,低周波数の摂動電場を重ね合わせ,プラズマの安定性を系統的にチェックした。共鳴不安定性が原因と見られる粒子損失を確認したが,予想に反し,二つの不安定領域が近接して存在することがわかった。いずれの共鳴領域もプラズマ密度に依存してシフトする。幅の広い不安定領域は単粒子運動の非集団的な共鳴,幅の狭い方はコヒーレント共鳴に起因していると考えられる。 S-PODによる上記実験と平行して,ソレノイドトラップによる純電子プラズマの蓄積実験を行った。電子ビームの入射条件の最適化を試みると共に,プラズマ閉じ込め時間に対するサイドバンド冷却の効果を調べた。10^7個程度の電子を使った実験では閉じ込め時間が約7倍に改善された。実験の高効率化を図るため,プラズマの径方向空間分布計測用蛍光スクリーンの導入を現在進めている。
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