研究概要 |
本研究では先ず,物性評価としての新しい分析手段を確立するための超高真空中で稼働する「テラヘルツ波顕微鏡」を開発し,これを用いた低温・高圧力という多元極限環境下でのテラヘルツ波分光を可能とした。更に,高圧下で興味ある物性を発現する物質である充填ススクッテルダイト化合物PrRu4P12やパイロクロア酸化物LiV2O4に対して赤外-テラヘルツ顕微分光実験を実施することにより次の様な成果を挙げた。(1)低温・高圧下で金属から絶縁体への転移が予想されているPrFe4P12の電子状態変化を明らかにするため高圧下の顕微分光実験を行い,室温ではフェルミ準位を横切る2つのバンドが存在することに対応した金属物性に対応する2つのドルーデ成分が存在することを見出した。(2)又,低温の6K・16GPaではキャリヤーに対応するドルーデ成分の強度は常圧での金属状態に比べて大きく減少するが,大方の高圧下の電気抵抗測定からの予測に反して,尚,低濃度のキャリヤーが残存する半金属状態にとどまっていることを明らかにした。(3)LiV2O4に対して低温・高圧下の顕微分光実験を行うことにより,低温でのみテラヘルツ波領域の反射率に電荷密度波形成に対応すると見られるブロードなピークが存在することを見出した。以上の成果を日本物理学会・日本放射光学会・国際会議などで成果発表を行った。
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