研究概要 |
Mn酸化物の低温における反射スペクトルの時間変化を測定したところ、反射光強度が時間とともに非常にゆっくり振動していることが判明した。その振動の周期は,数時間から数10時間という異常な長さである。この異常な反射率振動は波長によってその振動周期が異なるために、スペクトルが時間とともに変化する。この現象は、強相関電子系の物性の何かを反映している可能性が高いため、その点を明確にする必要があると考えた。本研究の目的は、「1.この異常な反射率振動が強相関電子系の示す物性に起因するものなのか,測定の問題なのかを明確にすること」である.さらに、「2.どのような物質・条件で観測されるのかを系統的に調べること」にある。 昨年度は,測定系を完成させ,これまでと同じ試料を用いて,反射率振動が測定系の問題でないことを確認した.今年度は,その他の物質(半導体,金属)でそのような振動が見られないことを確認した.ただし,別の機関に出向いて真空度を高めた測定を行ったところ,明瞭な振動は確認できなかった.したがって,この異常な振動は強相関系物質の本質ではなく,表面に何かが付着し,光を反射する表面層が生じたことが原因である可能性が高い.この表面層の多重反射によって,反射率の変化が観測されたと考えられる.ただし,同じ条件下で半導体や金属では見られないことから,表面に特殊な層が生じるのは,強相関系の物質に限られると推定される.
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