研究概要 |
本研究では、X線からX線と極端紫外光に分かれる(X→X+EUV)パラメトリック変換により結晶中の結合電荷密度を調べられるか否かを明らかにすることを目標としている。このためには、非常に微弱な当該過程について、定量解析に耐える高精度のデータを系統的に蓄積する必要がある。そこで初年度である平成19年度は測定装置の改良を行った。まず(1)非線形結晶から散乱される様々なエネルギーのX線の内、パラメトリック変換されたものだけを選び出すための高精度結晶湾曲機構を設計・製作した。また(2)自動ゴニオヘッドを導入し、パラメトリック変換の位相整合条件を手早く高精度で調整出来るようにした。さらに(3)空気散乱によるノイズを低減するために、非線形結晶を入れる真空チェンバーの一部を製作した。これらの改良により、以下に述べるような様々な条件下での高精度測定が限られたビームタイム内で効率良く出来るようになった。 本年度の計画に従って、まず(A)ダイヤモンドの111逆格子ベクトルを用いたパラメトリック変換について、アイドラー光のエネルギー依存性を12〜340eVまでの広い範囲で調べた。その結果、80eV付近でシグナル光強度のロッキングカーブ(位相整合条件依存性)が劇的に変化することを発見した。同様の変化が、内殻励起のある290eV近傍で起こることも分かった。また(B)逆格子ベクトル依存性を(1,1,1)、(2,2,0)、(2,2,2)、(3,1,1)について測定し、ロッキングカーブの形が大きく変わること、高次になると急激に強度が弱くなることを明らかにした。さらに(C)シグナル光とアイドラー光が平行な場合と反平行な場合について調べ、ロッキングカーブの形が反転していることを明らかにした。 本年度の研究によりX→X+EUVパラメトリック変換を理論的に解明するために必要な基礎データが得られた。これにより本研究の最終目標である結合電荷密度との関係を解明するための重要なステップを達成することが出来た。
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