近年のナノテクノロジーの進歩はめざましく、原子や分子を直接操作し、制御することが可能となり、従来、予想もできなかった新しい物質を人為的に作成することができる段階に達している。このような、人為的に作られた新物質(状態)の性質を調べる手段として、ナノプローブ顕微鏡が近年、盛んに開発されている。その代表例として、走査型原子間力顕微鏡や、トンネル顕微鏡などが挙げられ、物質表面の原子配列や電子状態を原子スケールで観測できるようになってきた。 一方、物質は必ず磁性を持つが、原子レベルでの磁気的状態を調べる技術開発が大きく後れている。本研究では、最近の研究によって明らかにされてきた高温超伝導体の固有ジョセフソン接合の性質を用いて、原子レベルの磁気的状態を直接観察する技術を開発することにある。その基本的なアイディアは、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合をミクロンサイズに加工することによって、この固有ジョセフソン接合を通過する磁束の大きさを高感度で検出できることにある。このアイディアと既に高いレベルにある走査型プローブ顕微鏡の技術を磁気顕微鏡に応用すれば、1ミクロン以下の空間分解能を持つ磁気顕微鏡を開発することが可能でありその技術的な指針を得る基礎実験を行った。
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