スクイドを用いた微小領域の磁気検出法にはスクイド素子そのものを直接検出コイルとして使う直接型と、従来のスクイド磁束計などと同じようにピックアップコイルを経由して検出コイル位置での磁束の変化をスクイド素子へ間接的にトランスフォーマーコイルで伝える間接型とが考えられる。どちらも一長一短があるが、できるだけ微小空間での磁場変化を検出するため、我々は直接スクイド素子を検出コイルとして用いる直接型を取り上げた。 これまでも従来の超伝導体を用いた直接型磁束計は、たとえば、フランスのグルノーブル(CRTBT)で開発され、実用化されている。この場合、空間分解能はスクイドリングの大きさで決まることから、約1ミクロン程度が限界である。本研究で目指すものはこれ以上の分解能を有するスクイドの作成である。そこで、空間分解能をあげるため、スクイドとして固有ジョセフソン接合系を使う。幅1ミクロンのBi2212系の単結晶を用いれば、超伝導層間距離が1.5nmであるから究極的には、1.5nmまで分解能をあげることができるはずである。1層の素子を作成することは困難であるが、厚さ100nmに単結晶を加工することは可能である。この厚さが実現できれば十分、スクイド磁束計として作成可能であることから、この様な素子を作成し、スクイドの基本特性の測定を行った。その結果、スクイドとしての磁束の量子化は1.33Tで起こり、さらにこの振動を10-4程度まで分解可能とすれば、0.1ミクロン程度の空間で1ガウスの磁場変化を検出することが可能であることがわかった。これは空間変化率としてはきわめて高感度である。この様に、固有ジョセフソン接合を直接検出コイルとして用いれば、0.1ミクロン程度の空間で1ガウスの磁場変化を検出できるスクイド磁束計が原理的には可能であることが実証できた。
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