1.電子線リソグラフィーとリフトオフによってアルミニウムDC-SQUIDを作製した。ループは一辺が2μm、線幅0.2μmの四角形であり、トンネル接合面積は0.015μm^2、トンネル抵抗は約10kΩである。接合に並列抵抗は付加していない。 2.希釈冷凍機温度域でこの接合の基礎特性を調べ、以下を確認した。 (1)電流・電圧特性に抵抗ゼロの超伝導分枝はなく、代わって低電流領域ではほぼオーミックな特性が見られる。 (2)このオーミック抵抗値は外部磁場によって変化する。定電流バイアスしSQUID両端の電圧の垂直磁場依存性を測定した結果、垂直磁場に対して電圧が周期的に振動した。磁場周期はリングサイズから期待される値と矛盾せず、位相の拡散運動によって超伝導分枝が有限抵抗値を持ったと理解できる。 (3)さらに強い磁場をSQUIDループにほぼ平行にかけた測定の結果、振動振幅は磁場の増大とともに徐々に変化し、特に0.5T付近で大きく減少した。しかし、小さな振動はその後も続き、約1Tで最終的に消失することがわかった。これは薄膜A1の超伝導臨界磁場にほぼ対応する。 3.このように、この素子が最大1Tまで動作する磁気センサーとなることが確認された。通常のSQUIDでは磁束情報を読み出すために超伝導臨界電流以上の電流で素子を駆動する必要があるが、準オーミック特性を示す本素子ではそのような下限はなく、10fW以下という極微少の発熱量で十分測定が可能であることが確認できた。 4.なお、本実験用のベクトル型超伝導電磁石を設計・作製するとともに、温度安定性の高いPESレジストを用いて、リフトオフによるNb DC-SQUIDの作製も試みた。
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