研究概要 |
強相関電子系の研究は,現在物性研究の中心的課題となっており,実験理論両面から精力的な研究が進められている。しかし,興味深い強相関電子系の多くは金属的であり,従来の測定法ではそのESR測定は困難である。なぜなら,磁気モーメントが核スピンに比べ3ケタ以上大きい電子スピンではゼーマン分裂がそれに比例して大きく,ESR測定ではNMRに比べ高周波数の電磁波が必要で金属的試料表面の表皮効果が問題となる。そこで,本研究のねらいは,これまでの研究成果を踏まえてカンチレバーを用いたESR測定法の感度をさらに2ケタ以上向上させて,これまで不可能であった金属的強相関電子系のESR測定法を開発しようとするものである。今年度は,7T超伝導磁石を立ち上げ,定常磁場を昨年度の4Tから7Tに増加させ,ロックイン検出法を用いたカンチレバーESR測定を試みた。具体的には,Co-Tutton塩を測定試料とし,ガン発振器の光変調周波数をカンチレバーの固有振動数に一致させた共振的条件で測定をおこなった。その結果,ESRが観測された周波数が315GHzとなり,これは我々が知る限り世界最高周波数を達成した。そして,この結果をRev. Sci. Instrum.に発表するとともに国内外の研究集会で6回ほどこの研究に関する招待講演をおこなった。また,研究代表の太田は,この研究を含む強磁場ESR測定法の開発に対して,International EPR Society (IES)よりIES Silver Medal2008for Instrumentationを授与された。
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