19年度には、重力に逆らって気泡を液体中に保持する方法を開発し、定常加熱状態で気体・液体中の温度分布の予備的な測定を行った。 表面張力を利用して、極めて細いワイヤを用い、2mmという充分な厚みの液体を壁際に保持する方法を開発した。この方法は、熱伝導度の小さい材質の直径25ミクロンという極細のワイヤを用いているため、他の液体の保持方法に比べ、液体の自由な対流を乱す効果が最も少なく、理論が想定した温度分布を実現できると考えられる。 重力に逆らって充分な厚みの液体を容器の天井壁際にも保持できたため、液体中の厚み方向の温度分布の測定が初めて可能となった。温度分布測定の位置分解能は、すでに0.2mmであり、多数点で温度測定する方法を開発した。そして、気泡サイズが1mmの場合の予備測定を行った。加熱条件や気泡サイズを変えた、精密な定量的測定は次年度に行う。 実験から、気・液界面の近傍では、蒸発潜熱や凝縮熱のため、予想以上に液体中の温度勾配が大きくなっていることが分かった。そこで、位置分解能を更に向上させる必要が分かり、現在改良している。開発した装置の温度分解能は0.1度であり、受動型の温度計なので発熱が無く、気・液中の温度分布を乱すことなく測定できている。 予備実験では、容器の下から上方向に熱流を流し、対流を促進した状態での温度分布が得られた。この結果は、今後の重力に対して熱流の方向を上下反転させた結果と、比較する基準になる。 得られた実験結果は、日本物理学会で2回、速報された。
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