研究概要 |
不均一な要素からなる大自由度の非線形系が、その安定的作動を阻害する要因-(いわゆるノイズを含めた)環境の変動、動作が不安定な要素の混入など-に打ち勝って、システムを安定化させる機構を解明するのが本研究の目的の一つである。本年度は,線型バネで結合された2粒子からなるシステムの確率共鳴現象を扱い,次の事項を計算機シミュレーションによって見いだした。 1)振動する外場の振動周期が十分に長い場合,2つの粒子にそれぞれ異なる適当な強さのガウス白色ノイズを印可することで,2粒子平均として最も共鳴度の高い確率共鳴現象が実現されること,その場合の各粒子に印可されるノイズの大きさは単粒子系では最適ではない大きさであること。 2)振動外場の振動周期が上に比べて短い場合,2粒子に同等の大きさのノイズを印可することで,2粒子平均として最も共鳴度の高い確率共鳴現象が実現されること,その場合の各粒子に印可されるノイズの大きさは単粒子系で最適な大きさであること。 さらに,これらの結果を2粒子間の結合力が弱い極限について,厳密な解析計算によって示した。以上の内容は日本物理学会で発表され,また,論文にまとめ現在投稿中である。 一方で,蟻の集団についてその構成個体の非一様性が集団の性質にどのような正(もしくは負)の影響を与えるかも,本研究の興味の対象であるが,具体的な研究内容として,フェロモンによる蟻の隊列形成と進行方向の認識機構の実験的検証を開始した。とくに,フェロモンに対する化学走性だけでは説明できない隊列内での方向の認識について,クロクサアリ・トビイロシワアリでの大量動員システムに関する情報を基に、新たにトビイロケアリ・イエヒメアリを対象として室内行動実験系を構築した。これらの結果は,日本応用動物昆虫学会で発表された。
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